沖縄県うるま市を流れる天願川にアーチが重なる石造りの「天願(てんがん)橋」が架かっていました。今では「旧天願橋」と呼ばれ「ターチー橋」とも呼ばれているのですが、使われなくなった橋なんです。使われてはいませんが壊れたままの姿で戦争の跡地として残っています。
「旧」とつくくらいだから新しい「天願橋」ができているのですが、今回は「旧天願橋」について紹介していきたいと思います。
今まで紹介してきた橋のように、島と島を結ぶ橋というわけではないし、形がきれいとか、すごく長いとか、橋からの景色がきれいというわけではありません。でも、けっして忘れてはいけない場所のひとつだと思います。
旧天願橋は昭和9年ごろに完成した鉄筋コンクリート製の橋。当時はサトウキビを運んだり、生活物資を運んだりと、生活に欠かせない橋でした。この橋を中心にした天願川の景色が「南沖縄八景」にも選ばれていました。
人々の生活に欠かせない重要な橋でしたが、戦争中、アメリカ軍の本島北部への侵攻を遅らせるために、日本軍によって爆破されてしまいました。昭和20年の3月下旬のことでした。しかし、爆破によって橋は真ん中でくの字に折れ曲がってしまったけれど落ちなかったのです。天願橋に到着したアメリカ軍はブルドーザーで土を盛ってこの橋の上を通っていったそうです。けっきょくアメリカ軍を足止めできたのはたったの3日間だけでした。
旧天願橋は今でもくの字に折れ曲がったまま残っているし、アメリカ軍が土を盛って通って行った時の名残なのか今でも橋の上は土で埋まっています。
日本軍が落とそうとして落ちなかったこの橋にあやかって、受験生が合格祈願をするスポットとして注目を集めています。注目されるのはいいことだと思いますが、合格祈願のスポットとして注目されるだけでなく、旧天願橋で起きた出来事にも注目して戦争の跡地だということも忘れずに語り継いでいってほしいですね。
それにしても、爆破しても落ちなかったのはほんとにすごいです。受験生があやかりたくなる気持ちもわかるような気がします。
旧天願橋には「戦争遺跡」として認められた標柱が立っています。橋を自由に見ることはできますが、地元では安全のために橋の上や下には近づかないように呼びかけられています。
橋の周りは雑草で覆われているし、落ちなかったとはいえ折れ曲がっているし、やはり危ないと思うので、見るだけにしても合格祈願にしても気をつけて行ってくださいね。